クロスボーダーマーケティングにおける暗号通貨メディアの役割

ビットコインが2009年に誕生してからすでに13年が経つが、世界中の投資家やファンは依然としてその正確な価値を理解できていない。暗号通貨市場は年間数十兆円規模に成長しつつあるが、その情報発信の中心は「暗号通貨メディア」だ。「クロスボーダーなマーケティング」においてこれらのプラットフォームの存在意義は計り知れない。

昨年のデータによると、世界で最も読まれている暗号通貨関連記事は英語圏が約7割を占めるが、日本語版メディアも急成長中だ。「ビットポイント」や「SBI仮想通貨」など日本発の企業は現地言語で発信することで急速に国際市場に参入している。

従来型マーケティングでは難しい「文化的な違い」を克服できる点が最大の強みだ。「Crypto Twitter」と呼ばれる海外SNSコミュニティでは24時間365日対話が生まれている一方、「CoinDesk Japan」や「Decrypt Japan」など現地メディアはこれを活性化させる起点となっている。

例えば日本の仮想通貨取引所「bitflyer」は2021年にスペイン語版公式アカウントを立ち上げたことで南米ユーザーからの問い合わせが4倍増加したという実績がある。「現地発信」という概念自体がクロスボーダー戦略の核になりつつあるのだ。

CoinMarketCapによると2023年上半期、日本発の暗号通貨ニュースサイトで話題になった cryptocurrency は全体の流入額でトップ5にランクインしたケースが多く見られた。「Crypto Twitter」といったプラットフォームでは瞬時に国境を越えたトレンド形成が起きていると言えるだろう。

実際に日本発のNFTプロジェクト「NFT×Art×Culture」はメキシコでの展開にあたり現地パートナーを探していたところ、Twitterを通じて直接アーティストコミュニティと連携できたという成功体験がある。「暗号通貨メディア」という存在自体が新しいビジネスネットワークを創り出しているのだ。

暗号通貨市場全体として急速に成熟している一方で、「規制環境」という大きな壁がある。「SEC訴訟」といった国際的な法廷闘争に関する最新情報を素早く伝える必要がある状況で、現地語しかできない情報源では対応しきれないケースも少なくないのだ。

今後の展望としてはまず「多言語コンテンツ戦略」の重要性が挙げられるだろう。「AI翻訳」という技術も進化しつつあるため、将来的には自動翻訳でも十分な質を持つ記事が読まれるようになるかもしれない。「クロスボーダーな視点」を持った編集者によるコンテンツ制作こそ本質的な価値と言えるだろう。

伝統的な広告代理店だけでは追いつけないスピード感を持つ市場において、「暗号通貨メディア」は単なる情報提供者ではなく戦略パートナーへと進化しつつある。「国境」という概念そのものを再定義するような存在と言えるかもしれない。

今後10年を見据えると、物理的な距離よりも言語や文化といった要素の方が障壁となる可能性も高い。「ビットコインは世界中の誰もが使える決済手段になるべきだ」という中本聰氏の理念通りに近づくには、まさにこうした国際的な情報ネットワークが必要となるのである。